保坂新の戯言集

どこかの誰でもないアンポンタンがどこかの誰かである人が作った作品にうだうだ一丁前に評価を下すブログです 話半分に流していただければ幸いですTwitter:@chuhri0703

Keyシナリオライター傾向考察 第一回 麻枝 准

気ままに記事を書き続けて全然完成させられない大バカ者です。

本来各ライターの考察が完成後に一つの記事にして記載する予定でしたが書いているうちにあまりに分量が多くなってきたため、ライターごとに記事を分けることにしました。なお完成しているのは麻枝と新島のみの模様

私より先輩の鍵っ子の皆さんならもちろんお気づきかともいますが、一度言葉にしようと思いましたので自己満足にお付き合いください。何様やねん

また記事の性質上各作品のネタバレが記載されます。その点はご留意ください。

 

なお続くかどうかは読んでもらえるか次第…なら他のライターをさっさと完成させろ

 

麻枝 准 

代表作:CLANNAD, AIR, Angel Beats!,etc...

 

言わずと知れたKeyというブランドの顔である麻枝准氏。彼のシナリオのテーマは一般的に「奇跡」や「家族」であると言われます。しかし本当にそうなのでしょうか。今回はゲーム、アニメ、そして音楽を通して彼が大事にしているテーマを考察していこうと思います。

麻枝氏のシナリオにおいてキャラクターの死や別離は多く見受けられます。

 

例としてはCLANNADにおける古河渚

AIRにおける神尾観鈴

リトルバスターズ!における初期メンバーとの別離、

Charlotteにおける乙坂歩未

 

これらのキャラクター達が容易に挙げられるでしょう。この他にも楽曲ではあるが近年リリースされたLong Long Love Song(以下LLLS)におけるBus Stopや君だけがいてくれた街においても旅立ちや不可避な別離を描かれています。このため麻枝氏のシナリオ、もっと言うとKey全体においてキャラを殺すことで泣かせているという評判を得ている部分があります。しかしこれは本当に正しいのでしょうか?

 

CLANNADにおいて古河渚は確かに主人公との娘を出産する折に亡くなってしまいます。しかしここが作中での一番感動するシーンではなく、その後の主人公が彼女の死を受け入れ、自分の娘と和解するシーンや長い間対立していた父との和解のシーンがそれらに挙げられます。

AIRにおいても神尾観鈴が役目をやり切り亡くなってしまうシーンが確かに感動するシーンとして挙げられやすいですが、私個人としては娘の死を受け入れた神尾晴子が前に進むシーンを一番のシーンであると主張したいです。

 

このように必ずしも死や別離のシーンが一番感動するシーンとして挙げられているわけではなく、むしろ和解や主人公が悲劇を受け入れるときに感動するという声の方が多いです。そしてその最たる例はやはり智代アフターになるでしょう。

この作品はCLANNADのヒロインである坂上智代ルートを軸としたスピンオフ作品であるが、この作品では主人公が最後に亡くなってしまいます。この作品のキャッチコピーは「人生の宝物を探しにいこう」です。この作品では主人公と智代の前に様々な困難が降りかかります。その壁を一つずつ乗り越えていった先に存在するのは死という形での別離でした。このためあまりの救いのなさから発売当初は麻枝氏が発狂寸前に追い込まれるまで叩かれました。しかしここにこそ麻枝准のシナリオの神髄があると考えていいます。たとえ悲劇が先に待っていたとしても先に進むことができるのか?、永遠に続く愛などあり得るのか?、麻枝氏が追い求めている答えを醜いまでにしっかりと描き切った作品であると言えるのではないでしょうか。

 

この考え方は先に述べたLLLSにおいても現れています。この楽曲は最後から2曲以外は様々な悲愛を表した曲です。例えばBus Stopは故郷からの孤独な別離、君だけがいてくれた街は大切な人を守るために分かれざる得なかった恋人が主題となっています。このようにLLLSの多くはどこか悲しい雰囲気を持った楽曲が多いです。しかし最後から2曲はこれに反しています。Supernovaは想い合いつつも結ばれることがなかった2人がたくさんの生まれ変わりを繰り返していたこと、そしてLove Songの作り方ではその先に幸せになった二人の物語が紡がれています。これらは考え方によってはご都合主義であるかもしれません。しかしこう考えることもできます。たくさんの悲劇を繰り返してそれに立ち向かってきたのなら、その先にほんの少しのご褒美はあってもいいのではないだろうか?これらのご褒美はゲームシナリオでも見受けられ、奇跡という形で表れています。

 

CLANNADにおける光の玉、リトルバスターズ!における主人公と棗鈴だけによる世界、このように一見ご都合主義に見える物のたくさんの悲劇に立ち向かった先のご褒美と考えると受け入れやすくなるのではないでしょうか?またこの奇跡も何も万能なものとは言えません。

Charlotteにおいてはすべての能力を奪うという奇跡を辛く孤独な現実と向き合うことで達成することができました。しかしその代償として主人公は記憶を失ってしまいます。ですがそれでも大切な恋人や家族、友人だけは失うことはありませんでした。この悲劇の先に見える優しい世界こそ麻枝准のシナリオの真骨頂ではないでしょうか。

 

これらのテーマは初期作品のONE~輝く季節へ~にも表れています。基本骨子として主人公は過去の悲劇から逃げるために現実世界から去り、永遠の世界へ旅立たなければなりません。この上でもう一度現実世界に戻るためには大切なことが存在します。それは永遠の世界に旅立った者自身が強く戻りたいと願い、そして現実世界の人間も戻ってきてほしいと強く願わなければいけません。特に後者はそれほど大切な人を失う悲しさと周りの人がその人のことを忘れても耐え続けなければいけないという強さが求められます。ここでもやはり現実に抗い続けることで得られる現実にとっては小さな奇跡を得るという流れが存在します。

 

このように初期から一貫して今まで悲劇に向き合い抗い続けるシナリオを麻枝氏は書き続けています。よって私としては麻枝准のシナリオの特長としては「無慈悲な現実にどう立ち向かっていくか」というものを挙げたいと考えています。

 

なら他のライター、今回SummerPocketsでメインライターを務めた新島夕氏はどうでしょうか?

ユーザーの意表を突くことしか考えないとよく言われる新島氏ですがどのようなシナリオの特長があるか?

次回はその部分について考察してみましょう。