保坂新の戯言集

どこかの誰でもないアンポンタンがどこかの誰かである人が作った作品にうだうだ一丁前に評価を下すブログです 話半分に流していただければ幸いですTwitter:@chuhri0703

【ラフノート】Summer Pockets REFLECTION BLUE

ラフノート今年二本目です。

いやー今回はお久しぶりですとか書かなくて済むわ!

ハイペースで書きたい作品が出るのは嬉しいことです。

今回の作品はSummer Pockets REFLECTION BLUEです

この作品は2018年に発売されたSummer Pocketsのアップデート版です。サマポケ自体は個人的にも思い入れがあり、初めて書いた感想記事だったりもします。

 

chu-linozaregoto.hatenablog.com

 この記事は何故か未だに読まれていたりして結構驚くことも多いのですが、今見直すと拙い部分も多く、正直恥ずかしいという思いもあったりします。なのでサマポケRBに関してはラフノートではなくとも何か書こうと思っていたのですが…まあしっかりやってくれました。

こっちで書こうと思えた出来だったので書きます。以後お付き合いを。

 0.初めに

Summer Pocketsから1年の月日が経ちました。当時スタッフの離脱と麻枝准の現状は勿論のことKey自体への閉塞感や今後もうだめなのではないかという思いを抱かせるのも難しくない空気でサマポケが発売されたことを今でも覚えています。Rewriteアニメであったり、ソシャゲの素早い撤退など正直もうだめだと思っていました。事実私自身もKeyよりも他のメーカーへ目を向け始めており、サマポケも諦めていました。

それでも自分にとって二次元産業の扉をたたくきっかけとなったKeyというブランドは大切なもので気にかけていました。そしてその中にKeyが大切にしてきた積み重ねた時間と仲間との絆という要素が見え隠れする体験版は本当に嬉しかったですし、期待を募らせるものでワクワクするものだったことを覚えています。

そして発売された作品は2018年の中で最も好きな作品でしたし自分にとっての夏ゲーランキングを激変させてくれるもので、1か月間ずっとサマポケをプレイしたことを覚えています。評価もKey復活を謳う人もたくさんいて時間が経つにつれプレイする人が増えていく様子が他人事でしかないはずなのに本当に嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。それが自分にとってのSummer Pocketsです。

いつか続きを読みたいと心から願い、またあの島に帰りたいと何回も思いました。辛いときにはシーンだけでも読み直して、大好きだったALKAを繰り返して、2年間の間一度だってその存在が薄れることはなかった作品です。

そんな作品にアップデート版が出ました。まあ思うところがある人は多くいると思います。スケジュール的に新島夕の参加は絶望的、蒼の特典は一切ない、というかアペンド版にしろといろんな声を聴きました。ただ自分にとってあの作品は10kを出しても良かったの思えた出来でしたし、その続きが読めるのならいくらでも出せる。そういう作品です。なので公式通販開始初日に入れてます。

そこからは本当に楽しみだった。コロナという状況下で大変だろうと心配していましたがよく頑張ってくれたと思います。そして今回も面白かったです。

1.世界観

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今作の世界観は田舎の離島での夏休みです。いくつかの不思議要素は入ってきますが基本はこれ、体験版で実際に体験するのが一番早いと思っています。

Keyらしい天然が混ざったヒロインやアホな友人達、さらに愉快な日常を盛り上げるモブたちと日常シーンはかなりカオスです。ルートから外れた話も中々面白いので是非読んでみてください。

そして最大の要素である夏休み、これはこの作品における最大の軸であり、全編にわたってこの要素が強く出ています。

懐かしい夏があった

新しい夏を知った

この島で出会った

砂浜に続く足跡に、自分の足を重ねてみる

誰かのたどる道を、少しだけ知った気分になった

振り返ることばかりだったけど…

歩き続けた

眩しさだけは忘れなかった。

これは無印のティザームービーの語りですが、終わってみるとまさにこのままだなと思う要素も多くあり、いろんな形の夏休みを楽しむこととなります。

…まあうだうだ語りましたが体験版やってみてください。 こればかりは言葉で説明するのは難しい。

2.共通ルート

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共通ルートは島にたどり着き、何を探して鳥白島まで来たかを語られるシナリオです。

体験版の大半を占めるシナリオであり、様々な住民と出会うことになります。

サマポケRBとなったことで静久や識との出会いも追加されており、今作の立ち絵持ちは大体出てきます。

このシナリオさえ読めばサマポケの雰囲気は完全につかめると断言してもいいくらいテーマがしっかりと詰め込まれています。

 

さてここからはネタバレです。サマポケRBを買ってやってから帰ってきてください。

 

3.鳴瀬しろは

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実は無印の中では一番好きなルートだったりします。泣けたとか面白かったではなく好きなルートです。作中でも一番夏休みというテーマをしっかりと描き切ったルートであり、このサマポケを象徴するものが多く描かれているルートです。

夏休みでできた友人達と全力で駆け回り、馬鹿なことをして、そして困難に立ち向かっていく。本当はないはずなのにどこか懐かしい夏です。この日々が楽しくてこのルートもかなりの回数やり直していたりします。

最初は人との交流を拒んでいたしろはもほんの少しのきっかけで少しずつ明るくなっていき、仲間の輪の中に入ってきて最後には想いを言葉にする。この流れ良かったですね…船が帰ってきてしまう部分も含めて。

4.加藤うみ

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今作からの追加ルートです。このルートはギミックとして4人クリア(うみの性格の変化)をする前にクリアしないとルートが閉じてしまうようです。なので鷹原さん予備が前提のシナリオとなります。

語られるのはサマポケの不満点として挙げられていた羽依里との関係性に特化したシナリオが展開されるのですが…本当に上手く作っていましたね…

彼女の帽子のエピソードや親子の絆、そして若干埋もれ気味だった羽依里の水泳部設定の活用などサマポケを終えたからこそ胸に来る物語となっていました。

これ誰が書いたんでしょうかね…個人的には魁先生と思っていたのですが、新島夕先生な気もするんですよね…

5.空門蒼

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エロ枠。

頭ピンク色の少女です。そんな彼女で描かれるのは姉妹の絆でした。

他のルートと比較するとどうしても見劣りしてしまう部分はあるのですが、このルートも面白かったんですよね…

特にラストの最後の二人の夏の一日を過ごす姿は今回追加された演出も含めてボロボロ泣かされました。魁先生お得意のこれまでのやり取りを振り返る演出が本当に上手く爆発していたと思います。

あと唯一の追加CBなしという不遇さですが、まあ残念ですがつばす先生忙しそうですからね…

6.野村美希

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さて今作からの追加ヒロインです。

今回は彼女のパーソナリティについて明かされ、鳥白島がどんな島なのかをよく表したシナリオになっています。

前作の様子からは想像できないような過去を持っていた彼女、ただその純粋さから七影蝶が見ることができたこと、町の寮で一人で生活していることなど何かあるのだろうという設定はある少女であることはわかっていました。ここまで重いとは思いもしませんでしたが…

このルートで挿入される夢の物語ですが、これはのみきの夢の物語ということでいいんでしょうかね…となると最初の夢は良一や蒼は置いておくにしてもしろははそれでいいのか…と思うところがほんの少しありますが。ただ真面目で本心を表現しにくい、そしてみんなに愛されて育てられたからこそ恐怖を覚えてしまうところは彼女らしくてかなり好きです。

また彼女の両親の話ですがこちらも鳥白島というベースがあるからこそ成り立つシナリオですね、恐らく大人たちはのみきの両親であることは知っていたのだと思いますがそれを口にしない優しさと遠くから彼女の夢を応援しようとする姿もこの作品らしくて好きです。どこまでも優しくてみんなが笑っていられるのがあの島なのですから。

7.紬ウェンダース

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 サマポケの中で事前では一番期待されてなかったであろうヒロインにして終わってみれば歴代個別ルートでトップ争いに食い込んだ少女です。

夏休みは限られている、ならどう過ごす?そんなテーマを詰め込んだ屈指の泣きシナリオです。

このルートは静久との関係性、別れへ向かうからこそ全力で夏を過ごそうと思う3人の姿の描写など本当に上手く描かれています。そして今作から入った演出も見事!夏の砂時計という曲名と終わりに向かうからこそ今3人でしかできないことを全部やりきろうという姿は本当によかったです。今回キャラソンが挿入歌として入るという話だったのでここでGolden hourが流れるのかなと思っていたのですがなんと流さないという采配、そこは驚きましたが夏に刻んだ、波の音は…を使った最後の最後で本心を吐き出してしまう紬のシーンをあのままにしてくれたのは本当に嬉しかったです。今回も相変わらず泣きました。

8.水織静久

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 そして追加ルート、こちらでは別の形の三人の物語が描かれました。

 設定に関しては少し後付け感あるな…と思う部分はありましたがまあそこは置いておきましょう。辛いことがあれば全部忘れてしまい、その辛いことが起こらないようにするためにお利口な存在になろうとする彼女の心の闇は重いものでした。母親関連に関してはいろいろ思うところはありますが、作中で当人たちが許している以上我々がそれについてああだこうだ言うのは門違いなので置いておきます。

 紬ルートで描かれた3人の関係とは別の形が描かれましたがこちらも見事でした。D.C4のハサマ先生が担当したと思われるルートの出来も見事でしたし今後も注目していこうと思います。というか次回作も呼びましょうね、マジで。

忘れたくない記憶、だけどそれは悲しい思いとセットにされたもの。ならその記憶を忘れられるか?そんな紬と静久のやり取りは本当に見事でした。これからは自分がいない世界で生きていかない大親友の静久のために本当は絶対に言いたくないはずの言葉を重ねる紬も、紬の気持ちを考えるのなら大嫌いと言わないといけないはずなのにあまりに大切だから大嫌いなんて嘘でも言えない静久も本当に素晴らしかったです。ここの夏の砂時計が一番泣けました。

その後に続く前に進むために、紬が押してくれた背中のためにお別れする羽依里と静久の姿も本当によかったです。これまで誰かに評価されているという実感を得るために貯めてきた付箋が飛んでいくCGのビジュアルはもちろんのこと、別れという儀式のためのやり取りも良かったですね…悲しいはずなのにまたいつか出会えると信じさせてくれるものでした。

そしてエピローグ、あれはずるい。途中の結婚式で人形を使って結婚式をやっていましたがこう持ってくるのか…と素直に感心しましたしこのエピソードが終わった後に少しフリーズしました。別の形でずっと2人のそばに居続けることを選んだ紬の物語の終わりをご覧ください。

9.久島鴎

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 サマポケの中で一番、それどころかKeyの個別ルートの中で一番面白いと思わせてくれたルートです。

ただやり直すのはすごい抵抗があったルートです。このルートに関しては冒険しているという要素の興奮と終わってしまったからこその物悲しさという要素が大きなエッセンスになっているので再プレイはしたくなかったですし、事実サマポケを終えてサマポケRBをプレイするまで1度もこのルートのテキストを読んでいません。なので私のサマポケはレコードはおろかCGも100%になっていません。

やり直して感じたのはその要素は的中してしまったなという気持ちです。面白いんですけどね?ただ自分の中であまりに神格化されすぎていたのでどうしてもギャップを感じました。

演出に関してはwithはうまく入っていたと思います。ただあそこでDeparture!は違うんじゃねえかな…とは思いましたね。ここだけは不満点でした。

10.神山識

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 今作の追加ヒロインにしてMVPです。

いや~流石魁先生です。昨年のうぐいすルート以降どうしたんすかマジで。

彼女がこの作中の時代の人間ではないことは発表直後のコミケで頒布された冊子のパッケージ没絵を見た時点で気づいていましたし、空門,鳴瀬と来たからには陸をつかさどる存在であろうことは容易に予想できました。…がここまでとは思わなかったです。ちょうど一年前と同様脱帽です。

日常を重ねていくにつれ変化していく識、それは救える命の数にも影響していきます。最初は自分の情けなさで救えなかった命も羽依里との日々で成長していくことで少しずつ増えていき、その関係も深めていく。でもその深めた絆はいつか断ち切らないといけない。それを突きつけたすべての島民が消えたシーンは見事でしたね。大体この手の話だと主人公が消える云々にするのですが、今回は島民全員です。それは彼女にとって鳥白島の人々はかけがえのない大切な存在だからこそその重さは誰よりも重くのしかかる。そして大切な人と別れても救うと決めた命のための行動は見事でした。この辺からずっと泣いてます。

最後の別れのシーンは勿論、結んだ手から鬼の役割を受け継ぐシーンは2回とも本当によかった。マジで泣いた。

中越しに 約束をした

始まりへ つま先を向けて

アスタロアの歌詞の一節ですがそのままでした。

そんな彼女が成したことはしっかりと残り、優しい鬼として記憶に残り続ける。それは夏鳥の儀という形として今でも死者を導いてくれる存在となっています。彼女のその役割はこの後に残っていますがそれはその時に。

すぐに泣いてばかりだったのに誰もが泣いてもいいと思える時には最後まで笑顔で背中を押す姿を見せてくれるのはいいですよね。

11.ALKA

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 サマポケにおける企画時点で麻枝准が提示したテーマである母親と娘の物語です。

色々賛否は分れるルートなのですがこのルートもしろはルートと同様何回もプレイし直してます。なんなら発売日前々日に終わらせてます。

今作から追加されたシーンとして識のことがあります。しっかり救えたことと彼女の存在は忘れられることなく心に残り続けている。そんなことを思わせてくれるました。

ALKA自体の感想はもう繰り返し読みすぎて上手く出てこないのですが、やはりしろはの母親としての表情の描写が本当に好きですね…最初は戸惑っていたはずの彼女がうみのために母親として振る舞う姿は大好きです。中でもかくれんぼのシーンは屈指の名シーンですね。

別れの花火のシーンが追加CGが入ったことで演出変更が入っていましたが…まあここは一長一短ですね。繰り返し読みすぎて違和感が強かったですがまあよかったと思います。写真の演出に関しては今回アスタロアのOPにはそのCGが入ってなかったので少し弱くなったなという印象ですが。

12.Pocket

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 そして最後のエピソード、Pocket。

母親との楽しい夏休みを過ごし、その母親を救うための羽未による旅の終わりの物語です。親は大切な子のためなら何でもできるとは言いますが、それは子も同じで、母親が幸せになるためならその身を無くそうとも必死になれる姿はやはり涙しました。

そしてED後に語られる言葉

ずっと昔

小さな頃

永遠みたいな夏を、駆け回っていた

家族と

友達と

どんなに遊んでもやることは尽きなくて

太陽はそんな毎日を、まぶしく照らし続けてくれた

いつの間にか、そんな思い出は記憶の彼方へ

ただ、あの日、まぶたに感じたまぶしさだけは、忘れなかった

サマポケという作品を象徴している一連の言葉で、開始時にも聞く言葉、でも「忘れなかった」という言葉にしたことでその先に続きます。

今回EDの歌詞が変更になることで話題を呼んでいましたが、ムービー自体も変更になっていました。そこでようやく公開されたのが絵本の最後の1ページ、こちら実は没音声としてサマポケにも衆力されているのですがようやくお披露目です。

羽未が2人の幸せのために犠牲になって、悲しみの涙を流す。けれど彼女の選んだ道はすべてが悲しみに満ちているわけじゃなくて虹の飛行機がまた2人を結ぶ。この流れは本当に大好きです。蔵からアルカテイルまでの流れも何回も見直してます。

またアルカテイルが最後に流れることに賛否はありますが、あそこは新しい夏の物語はここから始まるという意味合いも含んでいる思うのであれでいいのではないでしょうか?少なくとも自分は納得しました。

 

さて…ここまで読んでくれた人はありがたいのですが本当に終わらせましたか?

まだ終わらせていないのなら戻りましょう。終わってから帰ってきてください。後悔します。

 

 

 

 

 

 

帰ったな?

13.エピローグ

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 エンディングに不満がある人もない人も誰もが望まなかったことはないものだったのではないでしょうか?自分は自分でSSを書いてでも3人の笑顔を見たいと思ったほどには望んでいたものです。

長い長い旅路の中で願いは叶えたけど最後の最後で別の願いができてしまった羽未、そんな彼女が結んだ未来へ連れて行ったのが識、この流れ本当によくできていました。常世と迷い橘のある聖域を行き来して死者を導く彼女がいたからこそこの物語が成り立ったのだと思います。今作のMVPです。

そして感じたことは帰ってきた羽未とそれまで羽依里としろはと一緒にいた羽未は別の存在だなという部分です。これはCLANNADにおける幻想世界の少女と汐の関係性と同じですよね。どこかで羽未と汐の物語を読みたいと思いますし自分で書きたいと考えています。いつかきっと。

そして何よりこの時間軸での島のみんなを見てみたいと思います。

だからFDでもSSでも何でもいいから書いてくれ。頼む。まじでお願いします。

14.終わりに

リメイクとは思いで補正がどうしても出てしまい、うまく評価できないものです。ただ今作は素直に面白かったと思えましたし、2年間ずっと読みたいと思えたものが読めたので本当に満足です。

ただまだもう少しだけ鳥白島の物語を読みたいのでどうか新しい物語を綴ってください。

今後も鍵信者として応援します。